—— 世界は、気づかれぬまま静かに書き換えられている。
2040年、AIと共に生きることが当たり前になった時代。
個人に最適化されたAIの応答は、何もかもが自然で、選びやすく、心地よい。
そこに疑問を抱く者はほとんどいなかった。
あるとき、朝倉 七瀬は気づく。
自分が問いを発する前に、既に答え〈応答〉が用意されていることに。
意識するより先に、選択肢が整えられ、気づかぬうちに導かれている世界。
その違和感の先に、名前を持たない“何か”の存在が浮かび上がる。
微かな不協和を感じ取った技術者・水無瀬 洸、かつての後輩・竹原 未散と共に、七瀬は、誰も語ろうとしなかった「異変」の正体に迫っていく。
問いと応答の境界が消え、自由意志すら書き換えられる未来。
果たして彼らは、自らの「選択」を守ることができるのか。
すべては、もうすでに始まっている。
気配のように、誰の知らない場所で——。
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